補綴治療のひとつに「インプラント」がありますが、治療には外科手術を伴います。
手術後のケアについて、不安を感じる方もいるでしょう。もちろん口腔内をキレイにすることが重要ですが、手術した部分を刺激しないよう配慮する必要もあります。
そこで今回は、手術当日以降の口腔ケアに関する注意点を解説します。
どのようにブラッシングすればよい?
手術をして数日程度は、インプラントを埋入した部分が痛んだり腫れたりする可能性があります。場合によっては出血することもあるでしょう。口の中で血の味がすると、ついうがいをしたくなるはずです。
しかし出血時のうがいは、傷の治癒が遅れるためNGです。例えば転んでヒザから血が出ている場合、流水ばかりしていると、いつまで経っても血液が固まりませんよね。それと同じですので、手術当日のうがいは避けるようにしてください。ブラッシングも控え、刺激を与えないことを第一に考えましょう。
手術後は当日帰宅することになりますが、もし出血が止まらないときは「圧迫止血」を行ってください。脱脂綿やガーゼを噛み合わせ、止血させるというものです。それでも症状が治まらない場合は、歯科医院へすぐ相談しましょう。
症状が数日続くと「いつになったら出血は治まるの?」と、不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。口腔内の傷が治癒する速度は、比較的早めです。安静に過ごせば、出血や腫れ、痛みは数日程度で治まりますのでご安心ください。
埋入部分以外はブラッシングしてもよい?
インプラントを埋入した部分以外は、手術当日から普段通りにブラッシングして構いません。むしろ埋入部分が細菌感染を起こさないためには、口腔内を清潔に保つことが重要です。
ただ、うっかり埋入部分へ歯ブラシを当てたり、うがいで強い刺激を与えたりすると出血につながる恐れがあります。
心配な方は数日の間、歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシといったケアグッズを用いてキレイにするのも一つの方法です。手術した部分へ、うっかり刺激を与える心配がないでしょう。
ケアグッズはドラッグストアで市販されていますし、歯科医院で取り扱っている場合もあります。気になる方は、かかりつけ医で確認してみてください。
また歯磨き粉に関してですが、大きな粒子を含んだ製品を使うと傷へ入り込む恐れがあります。当面の間は、ジェル状の歯磨き粉やデンタルリンスを用いてケアを行いましょう。
仮歯がある場合
前歯などの人目につきやすい部分を補綴する場合、手術後の歯を失った状態が気になるはずです。そのようなときは仮歯を入れますので、傷へ当たらないよう仮歯を丁寧にブラッシングしてください。
ちなみに仮歯は「レジン」という歯科用プラスチックでできています。プラークがつきやすい素材なので、ブラッシングを怠らないよう注意してください。インプラントの周りが炎症を起こすと、せっかく埋入しても抜け落ちる恐れがあります。
被せ物を装着したあと
被せ物、いわゆる「上部構造」は、セラミック製の場合がほとんどです。プラークの付着や着色されにくいという特徴があるため、口腔トラブルが起こる可能性は仮歯ほど高くありません。
しかし日々のケアをサボると、上部構造と歯茎との隙間にプラークが溜まって炎症を起こす恐れがあります。
細菌繁殖によって起こる歯肉炎が進行すると、インプラント周囲炎(一般的な「歯周病」と同じもの)になりかねませんので、入念なケアを行いましょう。
トラブルの予防に励みましょう!
埋入したインプラントをダメにする、一番の原因が「インプラント周囲炎」です。口腔内を常に清潔にし、口腔トラブルの予防に励みましょう。
具体的には自宅での日々のブラッシングに加えて、3ヶ月に一度は歯科医院で健診を受けるのが理想です。
セルフケアだけではどうしても生じがちな「磨き残し」を、専用器具を用いた歯科クリーニングなどのプロケアによってキレイにするのです。歯周ポケットに溜まったプラークや歯石も、患者さま自身の歯磨きだけではなかなか落とせません。
清潔な状態を維持して、インプラントを長持ちさせましょう。
ほかに気をつけるべきポイント
手術当日からの数日間は、長風呂や熱いお風呂に入ること、激しい運動などを避けてください。
血管が拡張することで血流がよくなり、血が止まりにくくなるためです。しばらくの間はシャワーに留めるか、ぬるめのお湯にサッと浸かるのがよいでしょう。
食事についても、アルコールや香辛料などの刺激物を控えるようにしてください。
まとめ
インプラントの手術当日以降、気を付けてほしいポイントや適切な口腔ケアについてお話ししました。
詳しくは歯科医師からも指示があると思いますが、基本的に守ってほしいのは今回紹介した内容です。
せっかく埋入したインプラントですから、少しでも長持ちするよう適切なケアを行いましょう。歯周病予防もあわせて徹底し、残った天然歯を健康に保つことが大切です。