長期にわたる治療を終えて一段落。
装置を外したあとも、後戻り防止や経過観察のために定期的な通院が必要です。
そこで来院された際、
「なんだか、治療前と比べて鼻の下が伸びた気がする」
とおっしゃる患者さまがいらっしゃいます。
歯の矯正をキッカケに、その部分が伸び縮みすることはあるのでしょうか。
今回は口元以外の見た目にも変化が起こる理由について、記事の中で詳しく解説します。審美性を高める目的で治療を検討している方は、今後の参考にしてもらえると幸いです。
上顎前突の方は、治療後に「人中が縮んだ」と感じやすい
そもそも人中とは?
人中に明確な定義はなく、鼻の下のくぼみのことをいう場合もあれば、全体を指す場合もあります。
「短い人ほど顔が整っている」と考えられることが多く、若者の間では人中短縮メイクが流行しています。また短い人ほど、実年齢より若く見られやすい傾向にあるようです。
一方で人中が長いと、面長に見えやすくなります。
「口元が強調されて不正歯列が目立ちやすい」
「顔が間延びした印象になりコンプレックスに感じる」
と感じる方も少なくありません。
歯の矯正がキッカケで人中が伸縮するのは本当?
矯正治療は、あくまで歯を動かすための手段です。それが直に作用して、人中が直に伸び縮みすることはまずないでしょう。
しかし患者さまの中には「治療の前後で長さが変わった気がする」という方がいらっしゃいます。
実は、こういった方々には「上顎前突(出っ歯)の治療をした」という共通点があります。
これは一体、どういうことでしょうか。
治療で短縮されたと感じるのはどうして?
上顎前突を治して鼻の下が短くなったと感じるのは、口を閉じてもその部分が引っ張られなくなるためです。
というのも、唇に力を入れないと閉口できない不正歯列の場合、口を閉じかけると上の前歯に皮膚が引っ張られます。その結果、鼻の下が長くなった感じになるのです。
治療を経て前歯が正しい位置に引っ込むと、自然に口を閉じられるようになります。引っ張られることがなくなり、短縮した印象になるでしょう。
非抜歯の治療によって伸びたと感じる場合も…
これはレアケースですが、抜歯が必要であるにも関わらず抜かないで治療をすると、人中が伸びた印象になることがあります。
その感じるのはなぜ?
これは口元が前側へ若干突出することによって、閉口すると唇も張ってしまうためです。先述した、上顎前突の状態に近いといってよいでしょう。
不正歯列の主な原因の一つに「歯が並ぶための空間不足」があります。例えば9人分の席しかないところに、10人が座ろうとするとギュウギュウになってしまいますよね。どう頑張っても、キレイには並べられないはずです。
つまり非抜歯による矯正治療は、スペース不足の状態でムリヤリ進めることを意味します(もともと不要の場合を除く)。
歯列が外へ広がって前歯がずれ、口元が突出した感じになるでしょう。
抜歯で口元はどうなる?
歯を抜くこと自体が、口元の雰囲気を直接左右することは基本的にありません。可能性があるとすれば、笑顔になったときの口角と歯までの空間の変化です。
第一小臼歯(4番の歯)を抜くことで、この部分がやや広がった印象になることがあります。
いずれかの歯を1本抜く場合、きっと多くの症例で4番が選ばれるはずです。1~3番は固有の形をしている反面、4~5番は片方を失っても機能が落ちる可能性は低いためです。
ただ4番は、笑うと口角からわずかにのぞく位置にあります。抜歯によって、見た目の印象が少し変わるかもしれません。
口角と歯の間に空間があると気になる?
受け取り方には個人差があるため、一概にどうこうとは言えません。しかし当院でこれまで担当してきた患者さまの反応を聞いている限り、特に影響はないと思われます。
美しい歯列を表現する際に「ハリウッドスマイル」という言葉が使われることがあります。その条件となるのが「口角から歯までの空間がほぼないこと」ですが、私個人の考えでは、多少の隙間があった方が自然でよいと思っています。
「ハリウッドスマイルが美しい」という感覚を持った人ばかりではないことを、念頭に置いておきましょう。
歯列矯正で顔全体の均衡を整えませんか?
顔の印象を大きく左右するのは顔の下半分、つまり鼻の下から顎までの部分だという説があります。
つまり「口元が顔全体の雰囲気を変えうる」といっても過言ではありません。
今回は「人中」にフォーカスしてお話ししていますが、歯科医師は顔の下半分だけでなく全体的なことを考慮した上で治療計画を立てています。
治療の結果、口元や顔の印象がどう変化するのかをシミュレーションした上で治療の方針を決定しているわけです。
その内容は、患者さまにも事前に知っておいていただく必要があります。不明点があれば治療前のカウンセリングで解消し、治療の目的や治療に期待できる効果を理解した上で治療を検討しましょう。
名駅歯科クリニック・矯正歯科では、患者さま一人ひとりに合った最適な治療方法をご提案しています。
当院はJR名古屋桜通り口より徒歩2分と、アクセス良好です。公共交通機関を利用して、遠方から来られている患者さまも多数いらっしゃいます。
基本的に19時まで診療を行っていますので、仕事や学校の帰りに通院していただくことも可能です。
口元にコンプレックスをお持ちの方や歯列矯正を検討中の方は、ぜひ一度当院へお越しください。豊富な経験を有した歯科医師が、責任を持って治療します。