インプラントは「あごの骨」の量が重要
「あごの骨が足りない」と診断され、インプラント治療を断念せざるを得なかったという患者様は少なくありません。
インプラント治療は、あごの骨にインプラントを埋入する必要があるため、土台となるあごの骨の量が十分でないと、しっかり固定することができないからです。インプラントを安全に埋入するには、理想的には10mm以上、最低でも5mm以上の骨の厚みが必要とされています。
また、骨量が少ないと骨密度も低いケースがほとんどです。この場合、インプラントと骨が結合しづらく、より治療の成功率は下がってしまうでしょう。
こうした理由から、あごの骨が不足している場合は治療を断る歯科医院が多いのです。当院では、そのような患者様にも対応できる、高度な治療法を実践することができます。
ここで詳しくご紹介しましょう。
サイナスリフト
目の下から鼻の横にかけて「上顎洞(サイナス)」と呼ばれる空洞があります。サイナスリフトは、その上顎洞の側面の骨に小さな窓を開け、粘膜(シュナイダー膜)を持ち上げてできたスペースに骨補填材や自家骨を入れ、インプラントに必要な骨の厚みや高さを確保する治療法です。
サイナスリフトが適している方
骨の量が著しく不足しているケースに適した術式です。残っている骨の厚みが3〜5mm以下と極めて薄い場合や、複数の歯を同時に失っている場合でも適用できます。手術後の痛みはほとんどなく、腫れはあっても3~4日で引く程度です。
ある程度の骨が残っている場合は、
骨の移植と同時にインプラントを埋入することも可能です。ただし、骨の厚みが1〜2mm程度しか残っていない場合は、骨の移植を先に行い、4〜6ヶ月かけて骨の成熟を待ってからインプラントを埋入します。
治療の流れ
STEP1 歯肉の切開・歯槽骨の露出
上顎の歯肉の側面を切開し、歯槽骨を露出させます。骨の表面に小さな窓を作ります。
STEP2 シュナイダー膜の剥離・挙上
窓から上顎洞の粘膜(シュナイダー膜)を丁寧に剥がし、上方へ持ち上げます。
STEP3 移植材の填入
持ち上げてできたスペースに、人工骨や自家骨などの移植材を填入します。
STEP4 歯肉の縫合・安静期間
歯肉を縫合して閉じ、移植材が自分の骨として定着するまで数ヶ月の安静期間を置きます。
STEP5 インプラントの埋入
骨の定着が確認されたら、通常の手順でインプラントを埋入します。
メリットとデメリット
🔵【メリット】
顎の骨が少ない方でもインプラント治療を受けられる可能性が広がります。広範囲に骨を増やせるため、複数本のインプラントが必要な場合にも対応しやすい治療法です。
🔴【デメリット】
外科処置を伴うため、術後に腫れや痛みが出ることがあります。また、骨がしっかり定着するまで期間を要するため、治療完了までに時間がかかる場合があります。症例によっては身体への負担が大きくなることもあります。
ソケットリフト
ソケットリフトは、サイナスリフトよりも簡易的な手術で済みます。
インプラントを埋め込むために開けた穴から、直接サイナスの底面を内側から押し上げて骨を移植する手術です。
「クレスタルアプローチ」や「オステオトームテクニック」とも呼ばれます。
ソケットリフトが適している方
歯槽骨の吸収がそれほど進んでおらず、3〜5mm程度の骨の厚みが残っている場合に適用される術式です。適用できる方は限られますが、外科手術による身体への負担が少なくて済みます。また、インプラントの埋入手術と同時に行うため、比較的短期間で治療を完了できる点も特長です。
骨の吸収が著しい場合や多数の歯が欠損している場合には、ソケットリフトではなくサイナスリフトやその他の骨造成術を検討します。
治療の流れ
STEP1 歯槽骨の削孔
ドリルで歯槽骨を慎重に掘り進み、上顎洞の底の1mmほど手前で停止します。
STEP2 上顎洞底の挙上
「オステオトーム」という専用器具を用いて骨を内側から押し上げ、上顎洞の底面と粘膜を持ち上げます。
STEP3 移植材の填入
持ち上げてできたスペースに人工骨などの移植材を填入し、インプラント埋入に必要な骨の厚みを確保します。
STEP4 インプラントの埋入
多くの場合、この手術と同時にインプラント体を埋め込みます。その後、インプラントが骨と結合するまで数ヶ月待機します。
メリットとデメリット
🔵【メリット】
サイナスリフトと比べて手術が小規模なため、患者様の負担が少なくて済みます。骨の移植と同時にインプラントを埋入できるため、治療期間もサイナスリフトより短くなります。
🔴【デメリット】
適用できる患者様が限られ、多数の歯が欠損している場合には使用できません。切開を行わない術式のため、術野が直接見えない状態で施術することになり、医師の技量によっては粘膜を損傷するリスクもゼロではありません。
GBR(骨再生誘導法)
GBR(Guided Bone Regeneration)とは、骨が欠損した部位に自家骨や人工骨(骨補填材)を填入し、「メンブレン」と呼ばれる特殊な人工膜で覆うことで、骨の再生を促す治療法です。
骨が欠損した部位では、骨よりも周囲の歯周組織のほうが再生スピードが速いという特徴があります。そのままでは歯周組織が先に欠損部を埋めてしまい、骨がうまく再生できません。
GBRではメンブレンで欠損部を覆うことで歯周組織の侵入を防ぎ、
骨が再生できるスペースをしっかり確保します。これにより
新しい骨が再生され、インプラント埋入に必要な骨量を確保することができます。
GBRが適している方
サイナスリフトやソケットリフトでは対応しにくい、比較的小〜中程度の骨欠損がある方に適しています。
インプラントの埋入と同時に行える場合もあれば、先に骨造成だけを行ってから後日インプラントを埋入する場合もあり、患者様の骨の状態によって最適なタイミングを判断します。
治療の流れ
STEP1 歯肉の切開・歯槽骨の露出
歯肉を切開して歯槽骨を露出させ、骨量が不足している部分を確認します。
STEP2 骨補填材の填入
骨欠損部に自家骨または人工骨(骨補填材)を填入します。
STEP3 メンブレンで覆う
填入した移植材を「メンブレン(人工膜)」でしっかり覆い、歯周組織が先に入り込まないよう防ぎながら、骨が再生できるスペースを確保します。
STEP4 歯肉の縫合・骨再生の待機
歯肉を縫合して安静を保ちます。骨の再生にはおよそ半年〜10ヶ月程度かかります。
STEP5 インプラントの埋入・人工歯の装着
骨の定着が確認されたら、インプラントを埋入します。インプラントと骨の結合後、アバットメントと人工歯を装着して治療完了です。
※非吸収性メンブレン(チタン製)を使用した場合は、このタイミングでメンブレンの取り出しも行います。
メリットとデメリット
🔵【メリット】
適切な位置にインプラントを埋入するために必要な骨量を確保できます。骨量が整った状態でインプラントを埋入するため、安定性が高く、長期的に良好な状態を保ちやすくなります。
🔴【デメリット】
自家骨を使用する場合は、骨を採取する別の手術が必要になります。また、骨の再生を待つ期間が必要なため、インプラント埋入から人工歯の装着まで治療期間が長くなります。喫煙者や糖尿病をお持ちの方は、骨の再生が滞るリスクがあるため、事前にご相談ください。