前回は、金属アレルギーの基本的な内容を紹介しました。今回は、さらに深堀して解説します。
金属アレルギーは、いつどのタイミングで発症してもおかしくありません。現在はアレルギーをお持ちでない方も、知っておいて損はありませんよ。
4.金属アレルギーが起こる作用機序
金属アレルギーは「感作」と「誘発」の2つによって起こります。
まず感作とは、繰り返される刺激によって、それに対する反応が徐々に増大する非連合学習プロセスのことです。
イオン化した金属は体内のタンパク質と結びついて「金属タンパク複合体」になりますが、免疫細胞によってこれが異物と認識されます。金属タンパク複合体がまた侵入してきても、免疫細胞がすぐ攻撃できるように備えるというプロセスです。
感作された物質が体内へ再び侵入すると、過剰な免疫反応が起こって色々な症状を引き起こします。これを「誘発」と呼びます。感作された物質は、ほんの微量であっても強いアレルギー反応を起こす可能性を秘めています。
もちろん、すべての人が発症するわけではありません。体質や触れる金属の種類など、さまざまな条件により発症します。
金属製のアクセサリーをつけたまま運動をしている方や、金属に触れる機会が多い方は注意が必要です。
汗で金属イオンが溶け出しやすい金属ほど、発症しやすいことが明らかとなっています。
特に、ニッケル・クロム・コバルトは「三大原因金属」とも呼ばれる物質です。汗に入っている塩素イオンに反応してイオン化しやすい物質であるため、身体の中へ移行して発症しやすいのです。
5.治療後に何らかの症状が起こったら?
インプラントの治療後に何らかのアレルギー症状が起きた場合は、早急に歯科医師へ相談してください。パッチテストを受け、チタンが原因である場合はインプラントを取り除かなければなりません。
除去後は、金属を使用しない入れ歯やブリッジで再度治療する運びとなります。
治療期間や通院回数を増やさないためにも、不安な方は事前に検査を受けることをおすすめします。
6.適切な治療法
金属アレルギーの有無を調べるには、パッチテストが有効です。パッチテストでは、金属を染み込ませたフィルムを皮膚に貼付し、症状が出ないかどうかを確かめます。医療機関で受けられますが、まずはかかりつけ医に相談するのがよいでしょう。
一度感作された金属は、残念ながら体内へ取り入れることができません。ただ原因となる金属の種類が判明していれば、生活の中でその物質を避けることにより症状をコントロールできます。
アレルギー反応によって皮膚の炎症が生じた場合は、ステロイド外用剤を用いて症状を緩和させるのが一般的です。経過観察をしながら、ほかの方法で再度治療を受けることになるでしょう。
7.このようなケースに注意!
次のいずれかに該当する場合は、早急に医療機関を受診してください。
1.手のひら2~3枚分以上の広い範囲で皮膚症状が見られる場合
2.痛みやかゆみがひどく、水ぶくれができている場合
3.ステロイド外用剤を1週間使用しても症状が緩和されない場合や、一度落ち着いた症状が繰り返し再発する場合
4.めまいや吐き気、息苦しさが生じた場合
特に4番の症状は、アナフィラキシーショックを起こしている可能性があります。早急に医療機関を受診してください。
8.予防する方法はある?
金属アレルギーを予防するためには、特定の金属へ頻繁に触れないことが大切です。時計やメガネなどの肌へ直接つけるアイテムは、比較的安全なチタン製あるいはニッケル不使用の製品を選ぶとよいでしょう。
アクセサリーに関しても、メッキ製品ではなく純度が高い金やプラチナを選ぶのがおすすめです。
特にピアスは、体液へ金属が触れやすいため、医師の指示に従って着用することが大切です。ピアスホールが安定するまでは、チタン製のピアスなどを身につけるのがよいでしょう。
また、身につけるシーンも大きく関係します。
運動をする際や夏場の屋外など、汗をかきやすい場面では極力金属を身につけないよう注意してください。
なおインプラントだけでなく、入れ歯や詰め物が原因になる場合もあります。日頃から正しい口腔ケアを行い、むし歯にならないよう努めましょう。
そして金属アレルギーを発症した際は、原因となる金属を避けて生活することが重要です。医師の指示に従い、身のまわりの日用品や食品などに細心の注意を払って生活しましょう。