インプラント治療は、失った歯の機能を取り戻しつつ審美性も確保する治療法の一つです。
しかし、治療の過程で歯がない期間が発生することがあるため、日常生活で注意しなければならない点がいくつかあります。
この記事では、インプラント治療中は歯がない期間があるか、対処法、注意点、仮歯の役割、治療全体の期間の目安、具体的な手順についてご紹介します。
インプラント治療中は歯がない期間がある?
インプラント治療では、歯がない状態が発生することがあるため、注意が必要です。
ここでは、インプラント治療中は歯がない期間があるかについて詳しく解説します。
一時的に歯がない期間が生じる
抜歯後、すぐにインプラント体を埋入できないケースでは歯がない状態が一時的に続きます。
特に、歯茎に感染症の疑いがある場合や骨が不足している場合には、抜歯後に数週間〜数ヶ月の治癒期間を設けてから手術を行うため、空白期間が発生しやすいです。
空白期間については、どう対応するのか担当医と話し合っておきましょう。
歯がない期間は平均2~6ヶ月
一般的に、抜歯からインプラント体埋入までの治癒期間は平均2〜6ヶ月とされています。
また、埋入後もインプラントが骨と結合するオッセオインテグレーションの期間として、さらに3〜6ヶ月の待機が必要な場合もあるでしょう。
つまり、状況によっては合計で数ヶ月間、歯のない状態になることがあるわけです。
インプラント治療中の歯がない期間の対処法
インプラントの治療では、歯がない状態で放置することはできないため、担当医の判断によりいくつかの対処法を行うのが一般的です。
ここでは、インプラント治療中の歯がない期間の対処法について詳しく解説します。
入れ歯を一時的に作製する
一般的に、可撤式の入れ歯(仮義歯)を作製する方法が代表的な対処法とされています。
可撤式のものは取り外し可能なため清掃しやすく、広範囲の欠損がある方にも適応可能です。
しかし、安定性には欠ける場合があるため、慎重な使用が求められるでしょう。
隣の歯を利用して仮歯を作製する
両隣に健康な歯がある場合、それらを利用してブリッジタイプの仮歯も作製できます。
ブリッジタイプのものは機能性・審美性の面で優れており、インプラントが完成するまでの代用品としては十分に代替可能です。
しかし、支台となる歯に負担がかかりやすいため、担当医の判断が重要となるでしょう。
フィクスチャーで仮歯を作製する
一部のケースでは、フィクスチャーと呼ばれるインプラント体の安定性が十分に得られている場合、仮歯をインプラントに直接装着することも可能です。
これを、即時荷重と呼びます。
しかし、噛み合わせの条件が整っている必要がある他、歯茎が健康かどうか、骨の質や量が適切かどうかによって変わるため、まずは担当医と相談して決めましょう。
インプラント治療中の歯がない期間の注意点
インプラントを作製する間、歯がない期間は注意して過ごしたいところです。
ここでは、インプラント治療中の歯がない期間の注意点について詳しく解説します。
仮歯に強い力を加えない
仮歯は本歯や最終補綴物ほどの強度がないため、過度な咬合圧や衝撃などの強い力を加えるのは避けたいところです。
硬いものを無理に噛もうとすると脱離や破損の原因になるため、治療期間中は柔らかいものを中心に摂取するようにしましょう。
口に入れるものを精査する
仮歯を装着した場合、口に入れるものを精査する癖をつけましょう。
具体的には、氷をはじめステーキやせんべい、ナッツなどは避けたいところです。
噛み切りにくいものや噛み砕きにくいものなどは、仮歯が外れやすくなるだけでなく無理に咀嚼することで割れる可能性もゼロではないため、注意が求められます。
粘着性のあるものも避ける
ガムやグミ、キャラメルなど粘着性のあるものも避けましょう。
粘着性のある食品は仮歯の脱離や破損を引き起こしやすく、特に可撤式仮義歯を使用している場合、吸着が弱くなる可能性があります。
キャンディやスナック菓子など、歯表面に汚れが付着しやすいものも避けたいところです。
歯磨きで清潔に保つ
仮歯は本歯ではありませんが、同じように歯磨きで清潔に保つことが求められます。
歯間ブラシや歯ブラシによる丁寧なブラッシングはもちろん、フロスを使用した丁寧な清掃を心がけることで、インプラント周囲炎などのリスクを予防しましょう。
日本歯周病学会ガイドラインでも、インプラント周囲炎予防のために日常的なセルフケアと専門的クリーニングを推奨しており、口腔内を清潔に維持することは非常に重要です。
インプラント治療中の仮歯の役割
インプラントの治療で装着する仮歯は、ただの代用品というよりは一時的な審美性、滑舌や発音、噛み合わせを保つのに欠かせないものです。
傷口を守る意味でも、必要なものといえるでしょう。
ここでは、インプラント治療中の仮歯の役割について詳しく解説します。
一時的に審美性を保つ
仮歯は、一時的に審美性を保ってくれます。
前歯部などの見た目が重視される部位では、仮歯が審美面をサポートしてくれるため、歯のない状態を人前で避けたい方にとっては重要な役割があるといえるでしょう。
インプラントが完成するまでの間の緊急措置としては、見た目を保てるだけでも十分な役割を持っているといえるはずです。
滑舌や発音を保つ
仮歯があることで、滑舌や発音を保つことが可能です。
例えば、前歯が欠損するとサ行やタ行が不明瞭になりますが、仮歯を入れることで滑舌や発音の機能を補い、スムーズな会話に導く効果が期待できます。
噛み合わせを保つ
仮歯があることで、噛み合わせを保つこともできます。
咬合関係が崩れると、顎関節への影響や対合歯・隣接歯の移動が起こりやすくなるのですが、仮歯が入っていることで歯並びの悪化を防ぐ効果が期待できるのです。
傷口を守る
仮歯は、インプラント埋入部の傷口を保護し、刺激を軽減する役割もあります。
傷口が露出していると、日常生活でダメージが蓄積され、インプラントが完成する頃には口内環境が悪化していることもあるため、治癒をスムーズに進めるうえで仮歯は欠かせません。
健康な口内環境を守る意味でも、仮歯は必要です。
インプラント治療全体の期間の目安
インプラントは1日で完成するものではなく、個人差はあるものの一定の治療期間が必要です。
ここでは、インプラント治療全体の期間の目安について詳しく解説します。
手術自体は1日前後で完了する
担当医のスキルによっても左右されますが、重度の歯周病や虫歯が認められる場合など、よほどのトラブルがない限り、手術自体は1日前後で完了するでしょう。
インプラント体の埋入手術は、1本であれば30分〜1時間程度で完了することがほとんどです。
しかし、術後の管理は慎重に進める必要があり、当日は安静が求められます。
治療は半年~1年程度かかる
歯茎や骨の状態、治癒過程によって違いますが、治療には開始から最終補綴物装着の終了まで半年〜1年程度かかるのが一般的です。
カウンセリングを受けて治療計画から入念に進めていくインプラントは、数日〜数週間で作るのは困難でしょう。
状況によっては、歯茎を劣化させる歯周病や虫歯の治療を優先したり、骨造成を行ってから治療に入ったりすることがあるため、さらに治療期間が延長されることもあります。
なお、歯茎が健康でも骨が不足している場合は、サイナスリフトやGBR法(骨誘導再生法)などの造成手術が必要になると国際歯科用インプラントガイドラインでも報告されています。
上記手術の処置には数ヶ月単位の治癒期間が必要であり、全体のスケジュールにも影響するため、注意が必要です。
インプラント治療の具体的な手順
インプラント治療が初めての人は、具体的な流れについて知っておくと幾分か安心です。
ここでは、インプラント治療の具体的な手順について詳しく解説します。
STEP1.カウンセリング
カウンセリングでは、既往歴や生活習慣などを確認しつつ治療への希望なども聞き、担当医が適応できるかどうかを見極めます。
リスクや治療の流れについても丁寧に説明されるため、わからないことがあれば適宜質問しておくと安心です。
カウンセリングで聞いておくべきことには、以下のようなものがあります。
- インプラント治療できるかについて
- 起こりうる副作用やリスクについて
- 仮歯の有無と治療中の審美性について
- 手術の方法と麻酔の種類について
- 使用するメーカーの信頼性について
- 総費用と支払い方法の詳細について
- 治療後のメンテナンスの頻度と費用について
- 治療全体の流れと期間の目安について
- 保証制度の有無とその内容について
- 骨造成(追加処置)が必要かについて
以上はあくまでも一例となるため、事前にメモを持参して質問すると安心です。
STEP2.各種精密検査
インプラント治療を受けることが決まったら、血液検査をはじめ口腔内スキャンやCT撮影を実施し、歯茎の状態、骨の質や量を評価します。
口内環境だけでなく、インプラントが適応できるかどうか全身の評価を行うのが一般的です。
STEP3.手術前の処置
歯周病や虫歯がある場合は、インプラント治療前に優先的に治療を行います。
軽度の歯周病や虫歯であれば同時進行で治療を進めていくこともありますが、口内環境が悪化している場合は治療を優先するのが一般的です。
同時に、生活習慣やブラッシングの指導も実施されるため、指示に従いながら健康的な口内環境を作っていくことを意識しましょう。
STEP4.インプラント手術(1回目)
1回目のインプラント手術は、インプラント体を顎骨内に埋入する手術となります。
局所麻酔で行い、手術自体は1日で終わるのが一般的です。
STEP5.インプラント手術(2回目)
必要に応じて、2回目のインプラント手術としてアバットメントの連結などを行います。
アバットメントとは、インプラント治療で使用されるパーツの一つで、顎骨内に埋め込まれたインプラント体と上部構造と呼ばれる人工歯を連結する部分です。
STEP6.待機期間
インプラントが顎骨と結合するまでは、待機期間となります。
待機期間はおおよそ2〜6ヶ月とされ、期間中は仮歯などで対応するのが一般的です。
世間一般でいわれる歯がない期間というのは、この期間を指すことが多いです。
厳密には仮歯があるためまったく歯がないわけではありませんが、少なくともインプラントが完成するまでの期間=歯がない期間といえるでしょう。
しかし、完全に歯が抜けたような状態にはならないため、過度に心配する必要はありません。
何か不安なことがある場合は、担当医に事前に相談することをおすすめします。
STEP7.被せ物の作製・装着
最後に、最終補綴物を作製し、アバットメントに装着します。
一度作成・装着したら終わりではなく、必要に応じて色や形の調整も可能です。
担当医によって調整の仕方は変わってきますが、できる範囲であれば要望にも応じてくれるため、もし気になるところがあれば、適宜質問してみましょう。
STEP8.メンテナンス
インプラントは、定期的なメンテナンスが非常に重要です。
定期的に通院しながら、担当医だけでなく歯科衛生士とともにインプラントの状態を確認しつつ、適切にブラッシングできているかどうかを確認します。
ブラッシングがうまくできていない場合は、再度指導が行われます。
なお、人によってはインプラント周囲炎などの炎症を引き起こす場合もあるため、口内環境に異変を感じた場合はすぐに相談するようにしましょう。
その他、インプラントが外れたり割れたりした場合も、すぐに担当医に連絡しましょう。
まとめ
インプラント治療中は、治療の進行状況に応じて歯がない期間が生じることがあります。
しかし、仮歯を使用した対処や生活面での工夫を怠らなければ、日常生活や見た目への影響を比較的抑えることが可能です。
重要なのは、口腔内の状態に合わせて無理のない治療計画を立てることといえるでしょう。
なお、名駅歯科クリニック・矯正歯科ではCTによる精密検査と豊富な臨床実績に基づいたインプラント治療を行っており、仮歯や治療中の審美性にも配慮しながら患者さまの負担を抑えられる治療ができるようサポート体制を整えております。
インプラント治療に関する疑問がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談いただけると幸いです。