オールオンフォー(All-on-4)は、4本のインプラントの本数で全顎の歯を回復させる治療法の一つです。
しかし、オールオンフォー(All-on-4)の特徴や具体的な施術内容を知らない人も多いでしょう。
この記事では、オールオンフォー(All-on-4)とは、構造や仕組み、治療の流れ、メリット、デメリット、おすすめな人についてご紹介します。
オールオンフォー(All-on-4)とは
オールオンフォー(All-on-4)とは、片顎につき4本のインプラントを埋入し、その上にすべての人工歯を固定するインプラント治療の一つです。
従来のインプラントでは失った歯の本数分、もしくは相応の数のインプラントを必要とするのが一般的でしたが、オールオンフォー(All-on-4)では本数を最小限に抑え、外科的かつ経済的な負担を大幅に軽減できるのが特徴となっています。
この治療法は、スイスのノーベルバイオケア社とポルトガルのパウロ・マロ氏によって開発され、現在では世界中で導入されています。
日本においても厚生労働省が定める「先進医療」に該当することはありませんが、自由診療を請け負うクリニックで多数提供実績がある治療法です。
インプラント治療に興味がある人は、対応している歯科医院に一度相談してみましょう。
オールオンフォー(All-on-4)の構造や仕組み
オールオンフォー(All-on-4)の構造は、4本のインプラントを土台として一体型の人工歯を支える仕組みです。
ここでは、オールオンフォー(All-on-4)の構造や仕組みについて詳しく解説します。
インプラントを顎の骨に埋入する
オールオンフォー(All-on-4)は、インプラントを顎の骨に埋入するのが一般的です。
ここで重要となってくるのが、埋入するインプラントの位置と角度です。一般的に、奥の2本のインプラントは30〜45度に傾斜して埋入され、骨量が比較的豊富な前方部の骨を最大限に活用できるように埋め込みます。
それにより、骨移植などの追加外科手術を避けられる可能性があります。
人工歯でできた装置を取り付ける
オールオンフォー(All-on-4)は、人工歯でできた装置を取り付けるのも特徴の一つです。
インプラント体にアバットメントという中間構造を介し、12本前後の人工歯が連なったブリッジ型の装置を固定します。素材にはレジンやジルコニアが使用されるため、機能性と審美性に加えて耐久性も確保することが可能です。
見た目も自然で、日常生活での違和感も最小限に抑えられます。
骨移植などの治療が必要ない
オールオンフォー(All-on-4)は骨量が少ない方でも適応されることが多く、骨移植や造成といった前処置が不要なケースが一般的です。
持病を抱えている人や年齢を重ねている人にとっても、身体的負担を軽減できる治療法として注目されています。
オールオンフォー(All-on-4)の治療の流れ
オールオンフォー(All-on-4)によるインプラント治療を考えている人は、流れを知っておきたいところです。
ここでは、オールオンフォー(All-on-4)の治療の流れについて詳しく解説します。
STEP1.カウンセリング
まずは口腔内の状態や全身疾患の有無を確認し、治療の希望をカウンセリングします。
インプラントに精通する歯科医師(専門医や認定医)が今後の計画をはじめ、治療のリスクやメンテナンスの重要性について説明するのが一般的です。
何か気になる点がある場合は、カウンセリングの段階で解決しておきましょう。
STEP2.精密検査
カウンセリングが終わったら、精密検査を行います。
精密検査ではCTスキャンやレントゲンを使用し、顎骨の状態をはじめ、血管や神経の位置を把握するのが一般的です。人によって顎骨の状態はもちろん、血管や神経の位置も違うからこそ精密検査は非常に重要です。
最終的に、収集したデータをもとにシミュレーションを行い、インプラントを埋入する場所を決定します。
STEP3.インプラントの埋入
精密検査が終わったら、インプラントの埋入を行います。
顎骨に対して局所麻酔を行う必要はありますが、手術自体はインプラントを埋め込むだけであるため、時間はさほどかかりません。
手術当日、または翌日に仮歯を固定できる即時荷重も可能です。
STEP4.仮歯の装着
インプラントの埋入が終わったら、仮歯の装着を行います。
使用する装置の種類によって異なりますが、安定性が認められる場合は手術当日に仮歯を固定します。なお、インプラント治療全体では約2〜6ヶ月(他の治療がある場合は約1年)ほど必要ですが、仮歯を入れればいつも通りの会話や食事が可能です。
仮歯によって失われた歯を取り戻せるため、歯がない期間はごくわずかです。
STEP5.型取り
インプラントが骨と結合する期間(約2〜6ヶ月)を経て、最終的な人工歯の製作に入ります。
この段階で精密な型取りを行い、咬み合わせや口内の形状に合った装置を作成するのが一般的です。そのため、担当の歯科医師と具体的な日程を打ち合わせておくと安心です。
なお、歯周病や虫歯がある人は治療を優先させることもあるため、注意が必要となります。
STEP6.人工歯の装着
最後に、完成した人工歯をアバットメントに固定します。
必要に応じて機能性や審美性、耐久性のバランスを確認し、何も問題がなければ終了です。
STEP7.経過観察
インプラント治療は、人工歯を入れて終わりではありません。
インプラント周囲炎などの炎症を引き起こすことがあるため、定期的に経過観察が必要です。セルフケアが適切にできているかの確認も含め、年に数回の通院が求められます。
オールオンフォー(All-on-4)のメリット
オールオンフォー(All-on-4)を行う前に、どのようなメリットがあるのか知っておきたいところです。
ここでは、オールオンフォー(All-on-4)のメリットについて詳しく解説します。
顎の骨に左右されにくい
オールオンフォー(All-on-4)は、顎の骨に左右されにくいのがメリットです。
限られた骨量でも適応できるため、他のインプラント治療よりも柔軟に対応できます。
滑舌や発音が改善されやすい
滑舌や発音が改善されやすいのも、オールオンフォー(All-on-4)のメリットです。
義歯と違って上顎の口蓋を覆わないため、会話の違和感なく明確に話せるようになります。
歯を失うと滑舌や発音がうまくできず、他の人とのコミュニケーションにも支障が出やすくなるため、インプラント治療を検討するのが良いでしょう。
噛む力が改善されて咀嚼しやすくなる
噛む力が改善されて咀嚼しやすくなるのも、オールオンフォー(All-on-4)のメリットです。
天然歯に近い噛み心地を得られるとされており、食事を楽しみやすくなる場合があります。
歯を失うと噛む力が衰えることにより、全身への影響が出る可能性も指摘されているため、必要に応じてインプラント治療も選択肢の一つとして考えておきましょう。
精神的・肉体的な負担を抑えられる
オールオンフォー(All-on-4)は、精神的・肉体的な負担を抑えられるのもメリットといえるでしょう。
限られた骨量でも適応できることから必然的に手術の回数を抑えられ、治療全体にかかる日数も抑えることが可能です。結果的に、治療のストレスの軽減が期待できます。
術後の痛みが比較的感じにくい
オールオンフォー(All-on-4)は、術後の痛みが比較的感じにくいのもメリットでしょう。
骨量が限られている人でも適応できるため、該当箇所に対して最小限の切開と縫合で済み、回復もスムーズです。痛みの感じ方には個人差がありますが、比較的軽度で済むケースもあります。
人工歯が外れにくい
オールオンフォー(All-on-4)に限らず、インプラント治療は顎骨に直接埋め込むため人工歯が外れにくいとされています。
入れ歯のように着脱できるわけではありませんが、逆にこすれたりずれたりすることがあまりないため、快適に使用することが可能です。
治療の期間を短縮できる
オールオンフォー(All-on-4)は、即日仮歯装着により、治療期間を短縮できます。
完全に歯がない期間というのはほとんどないため、すぐに歯が必要な人も快適です。
治療の費用を軽減できる
オールオンフォー(All-on-4)は、インプラントの本数を抑えることで、治療費用も軽減できます。
支払い総額も他のインプラントより抑えられるため、予算が限られている人も安心です。
骨の吸収が起こりにくい
骨の吸収が起こりにくいのも、インプラント治療のメリットといえるでしょう。
骨吸収とは、骨を構成する成分が破骨細胞によって吸収される現象のことです。
本来、歯を失うと骨吸収が起こりやすくなるといわれているのですが、顎骨にインプラントを埋め込むとインプラントが骨に適度な刺激を与えることで、義歯よりも骨吸収が起こりにくくなるとされています。
見た目が整う
単純に、インプラント治療は見た目が整うのもメリットです。
失われた歯を取り戻せるため、笑顔に自信が持てるようになる人もいます。
オールオンフォー(All-on-4)のデメリット
オールオンフォー(All-on-4)を行う前に、どのようなデメリットがあるのかも知っておきたいところです。
ここでは、オールオンフォー(All-on-4)のデメリットについて詳しく解説します。
健康状態によっては治療できない
オールオンフォー(All-on-4)は、健康状態によっては治療できないのがデメリットです。
重度の歯周病や虫歯があっても歯を抜いて治療できますが、心疾患や糖尿病がある人は外科手術自体が制限されることがあるため、治療できない場合があります。
治療の可否については、歯科医師に判断を仰ぎましょう。
一方、口内環境が健康な人であればスムーズに治療を受けられるため、普段から丁寧なブラッシングを心がけておくと良いでしょう。
治療できる歯科医院が限られる
治療できる歯科医院が限られるのも、オールオンフォー(All-on-4)のデメリットです。
オールオンフォー(All-on-4)のように専門的な技術と知識が求められるインプラント治療は、すべての歯科医院で提供されているわけではありません。
提供していたとしても、実績によって仕上がりが変わることもあるため、腕の良い歯科医師がいるところを見つける必要があります。
一方、専門医や認定医のいる歯科医院であれば、素早い治療が可能となるでしょう。
保険が適用されない
オールオンフォー(All-on-4)に限らず、インプラント治療は保険が適用されません。
自由診療で治療費が自己負担となるため、慎重な判断が望ましいです。しかし、医療費控除の対象になる可能性もあるため、一度支払い総額を見積もりしてもらうことを推奨します。
歯科医院によってはデンタルローンや分割払いに対応しているところもあるため、支払い方法も含めて相談しておくと良いでしょう。
オールオンフォー(All-on-4)がおすすめな人
オールオンフォー(All-on-4)は、以下のような人に適した治療法といえるでしょう。
- 入れ歯で咀嚼しにくい人
- 入れ歯の手入れが面倒な人
- 総入れ歯を使用している人
- 歯がボロボロになっている人
- 本来の歯を求めている人
インプラント治療はすべての人におすすめというわけではありませんが、入れ歯で咀嚼しにくい人や入れ歯の手入れが面倒な人、総入れ歯を使用している人に適しています。
また、歯がボロボロになっている人、本来の歯を求めている人にも適した治療法です。
しかし、治療適応の可否については歯科医師の判断が必要となるため、まずはカウンセリングを受けて、自分がどのような状況に置かれているのかを理解しておきましょう。
粗悪なオールオンフォー(All-on-4)にご注意ください
粗悪なオールオンフォー(All-on-4)治療を行う歯科医院もあるため、十分注意しましょう。
オールオンフォー(All-on-4)は、ただ4本のインプラントで上部構造を固定すればいいわけではなく、ノーベルバイオケア社のプロトコルに則った治療が必要です。
場合によっては、ザイゴマインプラントを選択するのも良いでしょう。
ザイゴマインプラントは、上顎の骨が薄く、オールオンフォー治療が難しいといわれた場合に選択できる治療方法で、その日のうちに仮歯まで治療が可能となっています。
まずは、オールオンフォー(All-on-4)治療の経験が豊富な歯科医院を選びましょう。
まとめ
オールオンフォー(All-on-4)は、4本のインプラントの本数で口全体の機能性や審美性を改善できる先進的な治療法です。
総入れ歯が合わない人や骨量が限られている方などに適した治療法で、あまり時間をかけずに自然な口元と咀嚼力を取り戻すことが期待できます。
しかし、全身状態や骨の状態などによっては適応できないこともあるため、信頼できる医療機関での診断が欠かせません。
なお、名駅歯科クリニック・矯正歯科では、経験豊富な歯科医師が精密検査と丁寧なカウンセリングをもとに、機能性と審美性を両立したオールオンフォー(All-on-4)治療をご提供しています。
名古屋駅近くでインプラント治療をご検討の方は、ぜひ一度ご相談いただけると幸いです。